大学1、2年生の間にやっておきたいこと 学就BOOK 【改訂第4版】

☆４つか、☆５つか、迷いましたが、やはり学生さんに読んで欲しいので☆５つとしました。１「学」生生活を充実させ、「就」職活動では、学生生活で培った力を生かすことを基本コンセプトとして、大学1、2年生の間にやっておきたい（学生生活を充実させる）ことを提示している。個々の提示項目に賛同できる点が多く、なかなか良く考えられている本であり、大学生、特に大学1年生には是非一読を勧めたい。但し、このような本の性格上、１、２年生での取組の理想像を提示している。従って、大学生が提示項目を全て実行に移そうとすると、実際は全ての実行は無理なので、焦ったり、疲れ果ててしまう危険がある。提示項目を実行することが自己目的化すると逆効果である。目標はあくまで学生生活の充実であり、本書の提示項目は、理想のメニューと心得て、メニューの中から自分に適した実行可能なものを選んで取り組めば良いでしょう。また、本書の基本姿勢は、「大学生は人生の夢を描き、学生生活に目標を持って取り組むべし」というものですが、学生の中には、明確な夢も無く、学生生活の目標を具体的に立てられない人もいるでしょう。それでも良いと思います。その様な学生は、先ず、学業をしっかりやること、そして、サークル又は（及び）アルバイトに取り組んでみること位でも良いのです。しかし、漫然と取り組むのではなく、本書を読んで、すこし意識的に取り組んでみるだけでも価値があると思います。本書では「夢ノート」とか「自己管理ノート」とか○○ノートが幾つもあって記入する様になっていますが、負担が重ければ、必ずしも全てを記入する必要もないでしょう。取り敢えず、通読してみるだけでも、社会が大学生にどのような学生生活を送って欲しいと期待しているかが分かり、価値があります。２以下、本書の個別の記述について、強く賛同する点、逆に疑問を感じる点を記載します。＜プロローグ＞（６頁）「卒業後を意識した大学生活を」～その通り。「就職は3年になってから考えようと、１，２年生を漫然とだらーと暮らす」のが最悪です。１、２年生で基礎力を向上させることが重要です。（７頁）「歴史や文化、宗教、政治といった一般教養の知識」が重要～その通り。是非、１，２年生で履修科目を通じ、或いは新聞購読、読書を通じて身に付けて下さい。（8頁）「社会人基礎力を身に付けましょう」～その通りですが、その基礎は第6章の学生基礎力です。（11頁）「ぜひ多くの人に接し、多くのことにチャレンジし、自分の見識を広げていって下さい」～その通り。＜第1章将来の日本・世界＞（16頁）「日本ではなく海外で稼がなければ企業は生き残れないために、世界市場で活躍できる若者を採用しようとしている」～その通り。兎に角、英語の習得を頑張りましょう。日本国内でも英語の必要性は高まります。＜第4章学生生活の過ごし方４つのポイント＞（41頁）「全ての行動に目標を持たせようとし過ぎること」は避ける～その通り。（42頁）「社会人、学外の知り合いを作ろう」～理想ですが、絶対やろうと考えると負担が重いでしょう。「機会があれば」で良いのではないでしょうか。大学内でも社会人と出会う機会はあるでしょう。（45頁）理想の1日のスケジュールが記載されていますが、残念ながら「読書」や「新聞・雑誌購読」の時間がありません。是非、読書や新聞・雑誌の講読をお勧めします。＜第5章やって良かったこと、やれば良かったこと＞（53頁）「就活までにやっておけばよかったこと」＝「新聞を読むなど時事問題の知識習得」～その通り。（53頁）「先輩から後輩へのアドバイス」＝「大学生の一番の強みは、失敗が許されること」～その通り。講義やゼミでは積極的に発言しよう。「将来何がしたいか分からない人は、歴史や政治・経済の本を読むこと」～その通り。「思いて学ばざれば、則ち、殆(あやう)し。」であって、知識無しにあれこれ考えても良い結果は生まれません。先ず、知識を吸収してみることが大切。＜第6章学生力診断＞（63頁）価値観をしっかり持つようにしようと呼びかけている。確かに、その通り。しかし、本書はどうやって価値観を身に付けていくか方法論は記載していない。方法論は種々あるが、最も手近な方法として、評者は古典の読書を勧めます。（67頁）基礎学力（高校で学ぶ学力）の維持の重要性を述べています。その通りです。問題は、高校の全科目をしっかり身に付けていない大学生が多いことです。従って、本当に必要なのは、高校の学力の維持ではなく、高校の学力の獲得です。本書は、国語算数の維持（獲得）を強調していますが、それだけでは足りません。文系大学生であれば、１，２年生の内に、世界史、日本史、地理（出来れば生物も）位は高校の教科書を何度も読み返して身に付けておいて欲しいものです。教科書を読むのが面白くなければ、マンガでも関連する新書や文庫でも良いのです。兎に角、現在の大学生に欠けているのは、「考える力」というよりも、その前提となる知識です。＜第10章大学生活で磨く社会人基礎力＞（106頁）「（今の学生・新入社員は）社会人の目からは、あいさつや時間厳守など、最低限必要なマナーやルールが身に付いていないと見えるようだ」～その通り。＜第11章就職活動と準備＞（132頁）本書は、企業情報を得るために、日本経済新聞の購読を勧めています。評者は疑問に思います。先ず、日経新聞は「業界紙」であり、面白くありません。予備知識がない大学1、２年生で、日経新聞を読みこなせる人が何人いるでしょうか。評者はむしろ週刊『日経ビジネス』を読むことを勧めます。毎週買う必要はありません。月に1冊位買って、時間をかけて全体を読み通してみてはどうでしょうか。その方が企業情報を得る近道だと考えます。（133頁）「１、２年生からの新聞の読み方心得」が書いてあります。確かにその通りですが、これは自宅で新聞を購読している人にしか当てはまりません。新聞を取っていない人が直ぐ出来る方法ではありません。新聞を取っていない人は、先ず、読売新聞などの代表的な日刊紙を買ってみて、時間を掛けて全部を読んでみてはどうでしょうか。そして、内容の分からない記事については、ネットで検索して理解を深めましょう。慣れたら、図書館なども利用して各紙の記事を比較してみるのも良いでしょう。昔は、日本の日刊紙の編集方針は皆似ていました（要するに朝日新聞追随路線でした）が、現在は、相当違います。反権力、反政府で固まった日刊紙だけを読むのは危険です。＜巻末特集スタディスキル＞（138頁）「ノートの取り方」～これを見てノートがちゃんと取れる人は問題ありませんが、苦労している人もいるでしょう。そういう人は、ノートの左右のページの使い分けをお勧めします。授業中、重要だと思うことは、左頁に兎に角できるだけノートを取ります。そして、家で復習しながら、右頁にノートをまとめ直すのです。復習にもなるし、理解も深まります。以上です。